溺愛王子とヒミツな同居




「まったく。相変わらずヒロはまり坊には甘いね。

わかってるよ。俺ももう子供じゃないし、ちゃんと名前で呼ぶって。

えーっと、まりや久しぶり」



自己紹介をした時と同じ、えくぼを作って可愛らしく笑った谷山君に、当然笑って返すことなんて私にはできなかった。



小さい頃のことだし、本人はあまり気にしてないみたいだけど、意地悪されてた私にしてみれば、会いたくない気持ちの方が強い。



会う度に「ブス」って言われたり、私が大切にしてたウサギのぬいぐるみを隠したり、虫の死骸をプレゼントって言って手に乗せてきたり……。



言い出したらキリがないけど、そういう嫌がらせを会う度にされてた。



大翔君が見てないところでいつも。



バレそうになると、仲良くしてるフリしろっていつも脅してきて、私にとっては何一ついい思い出がない。



「ねぇ、さっきから気になってたんだけど、谷山あんた……まりや達とどういう関係なの?」



早々にお弁当を食べ終えた栞は、今朝コンビニで買ってきたと言っていたシュークリームを頬張りながら尋ねた。



「俺とヒロは従兄弟で、まりやとは小さい頃に何度かヒロん家で会ったことあるんだよ。

いつも泣いてて、ヒロがお守りしてたんだよなぁ」