「はーい、まりやちゃんは大翔の隣ね」
立ったまま3人を見ていた私を宮内君が慣れた様子で、大翔君の隣に私を座らせてくれる。
朝から言葉を交わしていなかった私は、どうしたらいいのか戸惑った。
「まりや……?」
難しい顔をして何かを考える谷山君は、弾かれたように私を見た。
「え? もしかして、まりやって……ヒロの後いつもくっついてビービー泣いてた、まり坊のこと?」
「まり坊……?」
キョトンとする私の代わりに、栞と宮内君が同時に聞き返した。
「やっぱそうだ。ヒロの幼なじみのまり坊だろ」
まり坊……。
そのあだ名を聞いただけで、私の心臓が嫌な音をたてた。
私のことをこのあだ名で呼ぶのは、“あの子”しか思い当たらない。
忘れていた小さい頃の記憶が嫌でも蘇ってくる。
私のトラウマの原因を作った男の子。
「祥吾、その呼び方やめろって言っただろ。
まりやは、女なんだからそういうこと軽々しく言って傷付けんじゃねーよ」

