溺愛王子とヒミツな同居




「ヒロ~、これからもよろしくな」



みんなに見せていた可愛らしい笑顔とは違い、どこか陰を含んだ不敵な微笑みを一瞬見せた彼。



その後すぐに、鼻歌を歌いながら自分のクラスへ戻っていった谷山君の表情は、普通の笑顔に戻っていた。



さっきのは、私の見間違いだったのかな……。



イケメン転校生ということだけでもすごい注目度なのに、谷山先生の弟さんという噂もすぐに広まり、お昼休みはその転校生を一目見ようと、2組の教室前の廊下が人で溢れ返っていた。



その噂の転校生、谷山君はというと、お昼になると同時に大翔君と宮内君を引っ張って、どこかへ消えてしまった。



お昼休みにこっそりと大翔君にお弁当のお礼をしたかった私は、まだ連絡先を交換してなかったことを激しく後悔していた。



「まりや~。お昼行こうぜぃ」



大きめのお弁当箱をぶらぶら下げて、どこかへ誘う栞に首を傾げる。