栞に笑われて、冷静に一つも零すことなく、ツッコミを入れる細かさについ私も笑いそうになる。
――キーン、コーン。
予鈴と共に、担任の谷山先生が早々に教室に入ってくる。
「おーい、みんな席着けー」
教師の中でもダントツの人気を誇る谷山先生は、今日もビシッと黒のスーツを見事に着こなしていた。
「おはよう。今日は早めにHRを行うからな」
いつも通りのHRを始める先生に対して、クラスの女子たちはコソコソと話し始める。
「そういえば、今日隣のクラスに転校生が来るって話聞いたんだけど」
「あ、それ知ってる。かなりイケメンって噂だよね」
先生の話なんてそっちのけで、女子達の話題は転校生一色。
私は盛り上がる女子達を見ながら、他人事のようにその話を聞いていた。

