その後すぐに家の中の明かりという照明全てが突然消えた。



マジかよ……。



停電するなんて予想もしてなかった俺は、とりあえずスマホをライト代わりにして、懐中電灯を探す。



大体の物の場所を把握しておいてよかったと思いながら、お目当ての物を見つける。



「……ひ……ひろ……と……くん……っ」



今にも消え入りそうな小さな声で、俺のことを呼ぶ声が聞こえた。



後ろを振り向いて、懐中電灯を照らすと、そこには風呂から上がったばかりのパジャマ姿のまりやが、今にも泣きそうになりながら立っていた。



「まりや……。大丈夫だったか?

急に停電するなんて参る……」



ギュッ。



そこから先、しゃべることができなかった。



何が起きたのか、自分でもわからなかったから。



ふわっといい香りと柔らかい感触がして、小さく震える温もりがそこにはあった。



ピカッと紫色に光った稲光の明るさで、まりやが俺に抱きついてきたことに気付いた。