商店街の中を通り、美味そうな匂いを漂わせている一軒の店。
「いらっしゃーい! あらぁ、まりやちゃんじゃないの!」
少しふっくらとした体形の小柄な女の人。
きっとこの人が米倉の母さんだろうとわかるくらい顔が似ていた。
「おばさん、こんにちは」
「久しぶりだねぇ。今日は何にする?」
まりやに注文を聞くおばさんの目が、後ろに立っていた俺の姿を捉えた。
「モデルさんみたいにいい男、もしかして……まりやちゃんの彼氏!?
いいねぇ、若いって。栞にももう少し女らしさがあればね。
まりやちゃん、あの子に爪の垢でも煎じてやって」
豪快に笑う米倉の母さんは、さすが親子。
笑い方もそっくりだった。
「お母さん、店番交代。あれ、まりやじゃん。
それに松っちゃん!?
何だよー。2人してデート?
いつの間にそんな深い関係になったんだよ」

