なかなか消えない感情に、ソファにあったクッションをぎゅうっと抱きしめる。
――ガチャ。
「ただいま」
玄関から聞こえた声に、一瞬でホッとしてしまう。
リビングに入ってきた大翔君と不意に視線がぶつかる。
「お、お帰りなさい。遅かったね」
真っ直ぐに見られなくて、一度合わせた目線をすぐテレビの方へ向ける。
「悪い。ちょっと呼び出されてた。
その後、光と谷山先生に捕まって、なかなか帰ってこられなかった」
「そうなんだ」
呼び出されてたっていうのは、先生に?
それとも、女の子?
心の中で、そんな詮索をしてしまう自分が恥ずかしくなる。
大翔君にとって、私はただの幼なじみだもん。
だから、気になるけど聞けないよ。

