仕方なくキッチンに行き、コップにお茶を淹れて戻ってくる。
「これ飲んだら帰れよ」
「サンキュー。何だかんだ言っても、オレは大翔が優しいこと知ってるし」
「褒めても何も出さねーぞ。
ほんとに何しに来たんだ、お前は」
「だーかーらー、お宅訪問だって。
この前は、引っ越し手伝おうと思ったのに、即NGだったし」
当たり前だ。女連れてくるなんて、冗談じゃない。
「そういやさー、ここに来る時に大翔の家のお隣さんの表札見てきたんだけど」
思い出したように呟く光に、少し嫌な予感がする。
「藤沢さんって書いてあったじゃん?
もしかして、まりやちゃんの家かな~とか思ったりして」
「…………」
こいつの女に対しての勘の鋭さには、ほんと毎回驚かされる。
苗字だけで、まりやの家だって普通は連想しないだろ。

