俺たちは『出会ったばかり』なのだから。
「瑠衣っ。待っててくれてありがとう。」
一条と橋本が見えなくなってから、美幸が現れた。
「今日は片付けの当番だったから、遅くなったの。ごめんね。」
さっきまでのイラつきが、スーッと消えて行く。
まだ濡れている髪の毛を触る。
「ドライヤーとか、無いのか?」
「あるんだけど、瑠衣を待たせたくなかったの。」
天然というか、なんというか…
本人は分かってないだろうけど、無自覚に俺を喜ばせる。
「今度から、乾かしてから来いよ。風邪引くぞ。」
「うん。」
まだ、手を繋ぐ勇気は無くて。
でも、前より縮まった2人の距離。
まだ、それだけで良いんだと思った。

