後ろから聞こえたその声は、聞き覚えがあった。
震えた声の主は、驚愕していた。
「橋本ーー……」
そこには、瞳に俺の姿を映した橋本が立っていた。
「それじゃあ、美幸は、ずっと我慢していたの?!」
パニックになる橋本に、俺は何も言えなかった。
「優也くん、本当のことなのっ?!」
一歩も動かず、悲しみの目で俺に尋ねる橋本に、静かに頷くしかなかった。
「そ、んな……。
どうしよう?!美幸を傷付けたっ!!
だって、美幸は優也くんの言葉だけを信じて、待っていたのよ?!」
パニックの中、叫ぶ橋本の姿が痛かった。
自分のことよりも、相手を想うその姿は、美幸と……そして瑠衣と被った。

