「二股みたいなことをしている先輩に言われたくないです。」 それでも、俺の言葉に佐川は動じなかった。 「橋本先輩と別れる勇気も無い先輩に、言われる筋合いも無いです。」 そりゃそうだ。 最低なことをして、美幸を裏切った俺に、あいつを好きになる資格なんてない。 「だって、あいつは俺を憎んでる。」 そもそも、俺は、美幸に深い傷を負わせた。 「何のことですか?」 佐川は俺の様子に違和感を感じたようだ。 「俺は、美幸を裏切ってんだ。」 たとえ、それが誤解でも。 美幸は泣いたに違いねぇ。