パァンッ!
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
目の前には手を空中で停止させている、お母さん。
ズキズキと痛む自分の頬。
ーーー私、殴られた?
平手打ちを初めて受けた。
お母さんは、お父さんが蒸発してからも、私をちゃんと育ててくれた。
一緒に過ごした時間こそ短いけど、愛情が無かった訳ではない。
仕方なく、育ててくれた訳ではないことも知っている。
会えない分、まともに怒られたことは、小学生以来、ずっと無かったけど、
殴られたことなんて、今までで一度だって無い。
「……お母さん…?」
「…なぜ、そんなことを言うの?」

