「あのな、正直に言うと、美幸の “誰も傷付かない” っていうのは無理だと思うんだ。」
瑠衣は、言葉を一つ一つ丁寧に選びながら言った。
「美幸は既に傷付いているし、それぞれの想いがぶつかる問題だから、皆が幸せな解決は出来ない。」
そう言い切った瑠衣に、心が痛くなる。
ずっと悩んでいた自分の意見を否定されたことが悲しかった。
「それなら、自分だけ傷付けばいいって美幸は考えるだろ?」
瑠衣の言うとおり、私は自虐的なことを考えていた。
『自分1人が傷付くことで、皆が救われるのなら、いいんじゃないか』
そう、思っていた。
「俺はな、これ以上、優也のことでも家族のことでも、傷付いている美幸は見たくない。俺が守ってやりたいんだ。」
また、瑠衣の言葉に、心が温かくなる。

