―…あたしは、健汰が走っていった道を、しばらく見つめていた。
少しは落ち着いたものの、やっぱり思考はついていかない。
なぜ、健汰は泣いていたのだろう?
一体、何があなたを苦しませているの?
『………はぁ…』
考えていても結論は出ない。
猫の思考力には、限度がある。
『…あたし、健汰のこと…何もしらないんだね』
そりゃあ、あたしは人間の言葉は喋れないし、会話が出来ないから、健汰のことを知るには限界がある。
でも、あたしはあまりにも知らなすぎるのではないのだろうか。
空を見上げると、そこには一番星が、キラキラと独りで瞬いていた。
『…綺麗だなぁ』
…健汰、あなたは何を隠しているの…?
辛いこと、悲しいこと、苦しいことも、何でも言っていいんだよ…?
隠さないでほしいの。
あなたのこと、全部知りたいよ。
‥‥ふふ、あたし最近、ワガママだね。