瞬間、あたしは無意識に健汰の元へ走り、甘えていた。
久しぶりの健汰の匂いに、安らぎを感じながら。
すると、健汰はしゃがんであたしを優しく撫でた。
健汰の手、なんて、暖かいんだろう…。
あたしののどはコロコロと鳴った。
「よしよし。ミユはいい子だね」
「ンニャァ」
「あ、そういえばおやつ…」
と、ゴソゴソとポケットを探る健汰。
「はい、どうぞ」
『ありがとう!』
美味しいなぁ。
健汰が持ってきてくれるおやつは、いつも美味しい。
でも、それ以上に健汰から貰ったというのが何より幸せだ。
おやつを食べ終わり満足して、ふと、健汰を見上げた。
『…健汰?』
顔を上げると、健汰はあたしをボーッと見つめていた。
そして、さっきから目に入っていて、気になったこと。
『…身体が、傷だらけ…』
なぜか、健汰の袖から覗く腕や首には、いくつかの痣。
頬には、ちょっとした切り傷が1つ。
どれも、前来た時には見当たらなかったものだ。
だが、時々こういうことはあったのだ。随分怪我をしやすいんだな、くらいにしか思っていなかったが、今回のは異常だった。
依然ボーッと見つめる健汰に、あたしはすりよった。
「ニャー?」
これが、あたしの精一杯。
すりよりながら、あたしは嫌な予感がしていた。
…すると、
突然、健汰の瞳から静かに、涙が頬を伝ったのだ。


