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不快な暑さを感じて、目を開ける。
周りを見渡すと、太陽が少し顔を出していた。
どうやら、早朝らしい。

「やぁ、ミユ」


声が聞こえた方に振り向くと、そこにはいつもの微笑を浮かべたあの子がいた。


『…健汰?どうしてこんな朝早く…?』

いつも来る時間は夕方なのに。
しかも2日間連続で来てくれるなんて!

不思議だと感じたものの、健汰が来てくれたのだ。無意識に胸が高鳴る。

ところが、妙だった。

「……」

『…?』


健汰は、にこにこ微笑んでいるだけで、何もしようとしない。


…ただ、立っているだけだ。
それが少し怖くなり、あたしは後ずさった。

(…何?どうしたの?健汰。)

目の前に大好きな健汰がいるのに、なぜか心は不安と恐怖で満たされる。

何かがおかしい。





―どれくらい、このようにしていたのだろうか。

「あのね、ミユ」

突然、健汰は口を開いた。

それだけで、体がビクリと震える。

(…あたし、健汰に怯えているの?)


健汰の瞳に、光が無くなる。
微笑みが消える。

いや、笑ってはいるのに、目だけが表情がない。


少し間をあけ、彼は再度喋り出す。


「僕さ、最近いつも思うんだぁ」


あたしは恐怖で体が震え、呼吸が苦しくなる。

(何を怯えているの?あたし。目の前にいるのはあの健汰だよ?あたしのような猫に会いに来てくれる心優しい健汰だよ?)

なぜ―…





嫌な予感しかしないの?








「聞きたい?あ、でもどうしよっかなぁ…」


やだ、やめて、言わないで。


「…よし、何もわからない勘違い猫のミユのために、言ってあげるよ」


こんなの、健汰じゃ、な、い…。




「僕ね……お前なんて、死ねばいいのに!って思ってるんだよね…」




目の前にいるのは、誰?


こんな人、あたし、知らないよ。





「だからさ、消えてよ」


その瞬間、あたしの視界は真っ赤に染まり、意識が、途絶えた。




―…最後に耳にしたあの声は、今までに聞いたことが無い程冷たくて、


残酷だった。