「悠樹、悠樹に話したいことがあんだけど。」


亮我が切り出した。

きっと、赤ちゃんのことを言うんだろう。

あたしはすぐに悟った。


「なんだよ。」

「立香にはもう話したんだけどな・・。」


亮我は悠樹に母親に子供ができたことを伝えた。

普通の家庭なら両手をあげて喜ぶことなんだと思う。

でも、それが亮我にはできない。

生まれてくる子供のことを思ったら尚更。


「俺さ・・生まれてくる子に辛い思いさせたくない。」


それは亮我の心の中の叫びだった。

自分が辛い思いをしてきたからこその言葉だった。

亮我のたどってきた道は幸せとは言えない。

辛いことも悲しいこともたくさんあった。

それはあたしたちが思う以上に。

あたしたちの何倍も何十倍も。