* * *
私は、先生が来るのを待ちながら昔のことを思い出した。
先生は担当医になったあの日から、毎日私の部屋へやってくる。
――ガラッ
「花純ちゃん、まだ起きてる?」
突然開いたドアから、先生が入ってきた。手には、二つのマグカップがあった。
「起きてるよー」
「また寝れないの?」
心配そうに先生は、私の顔を覗いてきた。
「いや、そうじゃないよ」
最近は、先生のおかげで寝れてる気がする。
「本当?ならいいけど……」
先生は、すごく私のことを気にかけてくれてると思う。
「本当だよ!」
「そっか。はい、これ」
差し出されたのは、温かい飲み物が入ったマグカップだった。


