「失礼します」
ドアを開けて入ってきた先生を見てはっと息をのんだ。
五年前のお兄さんの記憶が思い出された。
「っ、お兄さん……?」
私は、目を見開いて驚いた。
「久しぶり、花純ちゃん」
そう優しく昔みたいにひだまりのように微笑んだ。
「お兄さん、お兄さん!」
涙でお兄さんの顔がよく見えなくなった。
「花純ちゃん、はいどうぞ」
そっとハンカチを差し出してくれた。
「今日から花純ちゃんの担当医の寺本直輝です」
「先生、ありがとう」
この日からお兄さんという呼び方が先生に変わった。
……そして、この日から憧れというよくわからない感情が恋心に変わった。


