メタルフレームがきらりと光る。
「そういえば、ユーイチ先輩はなんでコンテスト出なかったんですか?」
カバンから財布を取り出して小田桐君が言う。
「ファッションデザイナーを目指してる訳じゃないからな。家の手伝いもあるし、仕上げたい作品もある」
真面目そうな口調だった。
独特な雰囲気と低く響く声が、彼が周りとなにか違うことを浮き彫りにしていた。
「そっかー。先輩の家、老舗の呉服屋なんでしょ?ユーイチ先輩も大変すね」
が、人懐こさがウリの小田桐世には、んなこと関係ないらしい。
なに、ユーイチ先輩て。仲よしか。
「その呼び方やめろ。僕は夕一朗だ」
言いながらも、新先輩ちょっと楽しそうだったりするけど。
ん……あれ。
少し下げられた目尻に被さる細いメタルフレームに違和感を覚える。
「新先輩、メガネこの前と違いません?」
「おー琳ちゃん鋭い」
「いくつか持っているから、その日の気分で変える」
へー。おしゃれさんなんだ。
そういえば、全身センスよくまとまった制服の着こなしで。
「ユーイチ先輩お金持ちだからなー。50本はあるんでしょ」
「そんなにない、せいぜい30本だ」
「え……」
小田桐君も私も固まった。
なにそれ、どこに仕舞うんですか。
「なんだ」
ノーコメント。
「……琳ちゃん、オレ飲み物買ってくる」
小田桐君が入り口に方向転換。
「あ、私も行く」
小さい小銭入れが胸ポケットに入っている。手ぶらで追いかけた。
「いってらっしゃい」
新先輩が軽く笑ったのが見えた。
かわいいですね、先輩。
お嫁さんになれます。