数日後。
だいぶ周りのざわめきもおさまった放課後、デザイン部に顔を出した。
部室の奥にある机をはさみ、小田桐君と対峙する形になる。
ぺらっと一枚の紙を取り出すと、小田桐君がコンテストについての説明をしてくれる。
「これね。とりあえず…一次選考はパスしました!」
紙の中央に『一次選考通過』の文字。
「おおー!すごい、おめでとう!!」
ぱちぱち手を叩く。
「ありがと」
嬉しそうに小田桐君は笑った。
「それで、次の二次選考からが琳ちゃんの出番なわけでして____」
二次選考が行われるのは来月。
実際に2着服を作って大会本部に送る。
1着目のテーマは『夏』、
2着目は『着る人を最も輝かせる服』。
いずれもトータルでコーディネートすること。
服以外に身につける小物等は既売品も可。
素材、服の形・種類、色は自由。
『着る人を最も輝かせる服』については、作品を着用したモデル(男女どちらでも)の全身写真を送ること。
写真は5枚まで。
この二次選考で、最終選考への参加権を手にする7人を選ぶ。
「___まあこんなかんじで。わかった?」
「うん。一緒に送る写真に、私が映るわけね」
「そ。でも時間があんまりないんだ。短期間で仕上げないといけない」
「締め切り…6月入ってすぐだっけ」
「ゆっくり考える時間はない。縫製に手ー抜くわけにいかないし」
小田桐君の縫製は凄く丁寧だ。それを2着となれば、仕上げるのだけでも大変なんじゃないか。
「さっそく幾つか描いてみたから、見てみて」
でも、そうやって作られた服を着るのがすごく楽しみだったりする。
「夏のほう、色は決まってるんだね」
机に広げられたデザイン画を一枚ずつ手に取る。
ざっとした鉛筆の線画にふわっと色鉛筆の色がのっていた。
『夏』のテーマで描かれたデザインにはすべてグリーン系統の色がはめられている。ちょっと青みがかったやつ。
「ちょっとエキゾチックな雰囲気にしたくてさ。まだらで、大胆な柄がいいと思ってる。あとは形なんだけど…」
見た限りでは……
「ぱっとしない」「びびっとこない」
同時に言ったのでお互いが何を言ったか聞き取れなかったけど、なんとなく、察した。
「んー…なんか、スカートにこだわんなくてもいいんじゃないの?」
捻りにひねって出た結論がそんなだった。
たぶん、私にデザインの才能は、無い。
「え、そうだった?……ほんとだ、スカートばっか」
無意識かい。
数秒うなって、小田桐君が急に立ち上がる。
「そうかもな。グリーン系で草木のイメージだし…けっこうサッパリでいいのかも」
おお。何もわからないよ。
「露出多めでいく。琳ちゃん、タンクトップ用意するから着替えて」
突然顔つきを変えてパキッとした小田桐君に飲まれる。
「、はいっ」
……身体、がんばって締めないと!



