そんなこんなで、大変身を遂げて登校。

所々で、噂するような小さな声や驚くような声も聞こえてくる、廊下を
ぐっと背筋を伸ばして体幹を締め、堂々と進んでいく。

これが本当の私よ。見せつけるように。

沢山の視線が生み出す緊張感が、同時に快感でもあった。

快感を得るために、惜しみなく努力する。
注目を集めるなら、それ相応の覚悟を持つ。

そう決めて、私は歩いている。


引き戸の開いたままの教室に入ると、位置的に奥のほう、私の席の斜め前に頬杖をついて座る小田桐君が目に入った。

まだ遠い距離から近づきつつ、「小田桐君、おはよう」と声をかける。
周りの人にもしっかり聞こえる声で、彼を呼ぶ。自分から声をかけたのは、いつぶりだったのかな。

ぱっとこっちを向いた小田桐君は一瞬動きを止め、
「…琳ちゃん」
ほど小さく言って私を見つめた。

「おはよう。なんか、すごい…いいね。似合う」
「ふふ。ありがと!」

誰よりも小田桐君に見てほしかったから、彼の誉め言葉がすごくうれしかった。
自然と口角が上がって戻らなくなる。

小田桐君がふっと顔をしかめたのに、私は気づかなかった。
すぐに彼が私の首もとの輝きに目をやって、満足そうに微笑んだからだ。

「おー。自信満々っぽいじゃん!いい感じ」
「でしょ?」

授業が始まるまでそこで話をし、私が席に着くために動くと視線もついて動いた。

その視線の中には前野たちのものも混じっていたのだけど、ただ興味津々といった感じでいるだけで何も言ったりはしてこなかった。