そうこうしているうちに着いたのは、そこから少しだけ離れたところにある大きな公園。
このあたりでは子供から恋人同士、お年寄りまで利用する公園で、私も昔はよく行った。
「この奥、行ったことある?」
メインの広場からどんどん離れていく。
「ううん、ない」
子供用の遊具たちの間をすり抜け、
カップルたちがいちゃつくベンチをチラ見しながら通りすぎ、
やがて敷地の端にひっそり佇む小さな階段の前に出る。
「こんなのあったの?」
周りは並木に囲まれていてさらに目立たない。
「まあ普通に歩いてたらわかんないよね。まずこんなとこまでは来ないだろうし……でも、普段から周りをよく見ておくのも大事なんだってさ。いかに人と違___、いや、なんでもない」
「……ふうん?」
「オレは子供の頃から知ってて、よく来てたけどまだ誰にも教えてない」
「え。知ってる人、いないの?」
「いや?ときどき会うよ。知らない人だけど」
小さな階段を、小田桐くんの背中について登っていく。
ぺたんこの靴を履いていても、一段一段重力が増していく。
運動不足だー……。
「この辺って、土地が小高くなってるでしょ。それが、ここで____」
最後の一段、軽く息を弾ませる私の手をぐっと引いてくれる。
一気に視界がざっとひらける。
「お……わぁ___…!」
一面夕色に包まれた風景。
設置されている手すりまで走っていって身を乗り出すと、ミニチュアみたいな街並みが見下ろせて、その向こうには横に流れる川が見えている。
「すごーい!私、高いとこ好きだよ!」
「そっか。よかった」
子供ばりにはしゃぐ私をくすくす笑っている。
手すりに掴まったまま上半身だけ振り向かせると、柔らかい笑顔が私を見つめていた。
「え、なんですか」
なんかその笑顔、ざわざわしてくすぐったくなるよ。
恥ずかしい。直視できない。
「んー…いい画だなって思って。動かないでねー」
そう言うと彼は唐突に座り込み、ボトムのポケットから小さな手帳をとりだす。
方膝を立てて机にし、差し込んでいたペンでなにか描きこむ。
「デザイン画。のアイデア」
「え、見たい」
言いつけを守って動かずに言った私のとなりに、小田桐くんが歩いてきて手すりに身を預ける。
手すりは頑丈だから、不安感は全くない。
「はい」
開かれたページを受け取って、かなり驚いた。



