SUCCESS?


目の前の左右反転した自分をじっとみつめる。

我ながら、超絶ダサいな。

意図してのこととはいえ、人って2年でここまで変われるのね。悪い意味で。

目を覆う前髪、美容室にはずいぶん行っていない気がする。

下がり気味の口角、色味のない唇。

私の美的センスでもって直視しがたい。
そうだ、変わってしまおうと決めてから、鏡を見るのが嫌いになった。
気持ちも比例して、自信が失われていった。

ふっと、GIRLSの表紙を飾った自分の姿が過る。
あの頃の私を胸に留めておきながら、今の私を一目見て同一人物だと見抜いた小田桐君ってすごいかも。

俯いて歩く私は、どんな風に見えただろう。

けど。

「琳ちゃん、髪きれいだねー!こんな長いのに毛先も枝毛ないよ」

「……はい」

これだけは、努力をやめていない。

艶めく黒い束をきゅっとにぎる。

やわらかくて、芯があって、つるつるした心地いい手触り。
ふわりとのぼる香りは、私の髪に合わせて選んだシャンプーのもの。

意識なんてしていなかった。
私の中の何かがそうさせていた。

……未練があったんだと思う。
どこかで、嫌だと、辞めたくないと、
この仕事が好きなんだと。

重くても暑くても、どんなに手入れが大変でも、切りたいと思えなかった。

腰を覆うまで伸びた長い長い髪。
ただ伸ばしただけの髪が美しいのか。

執着していた。

それを今、絶とうとしている。

なぜかな、躊躇いはない。

小田桐君の真摯な眼差しが視界の端に入る。

はやく変わりたい。

同時に、そんな思いさえ沸き上がってきた。

「この画みたら大体のイメージは掴めるんだけど……なんか要望とか、好みとかある?」

なりたい容貌。
もういっそ、周りが誰だかわかんなくなるくらいにしてみたいな。

あ。
わかった。

「ピンクブラウン!」