「うん…私、やりたい。協力させて」
ガバッと大きく頭を振り上げて、小田桐君が瞬きした。
私の表情を見とめると、ほっと息をぬいて柔らかく笑った。
その表情に、またきゅっ、ときこえる。
「琳ちゃん、ありがとう。すげー嬉しい」
そう放つと、小田桐君は席を立って、視界の下半分が遮られて苦しさを覚えた。身動きがとれない。
抱き締められてる……
気づくのに時間がかかるくらい、唐突に。
じんわり、私のものではない熱が伝わってくる。
私のものとは比べ物にならないくらいがっしりした肩に顔が埋まり、
すぅっとした香りが鼻孔をくすぐる。
「あ、ごめん!」
彼があわてて身体を離すと、ふいにさっきまで触れていたところが冷たくなって、
あろうことか少しだけ名残惜しさを感じてしまった。
それが恥ずかしくてまた頬を染め、俯いた。
「……琳ちゃん、顔上げて」
聞き終わらないうちに大きくて熱い両手が私の輪郭を優しげに包み、顔を上向かせた。
一大決心をしたばかりだというのに。
さっきから、違う意味で心臓がフル稼働中だ。
……今だったら、この人の言うことなんでもきいちゃいそう……
初めてのスキンシップが続きすぎて、フワフワ浮き立って、
私が私でないような___
私をまっすぐ見下ろす小田桐君の瞳をのぞきこむ。
同じように視線を返され、
感じたことのない、言い表せない気持ちがふつりふつりと昂ってくる。
「琳ちゃん、
オレが絶対、もう一度輝かせてみせる」
だから、もう隠そうとすんな_____
自信ありげに、胸をはっていて_____
そう声を落として、そっと私の目を隠す前髪をかきあげる指がまぶたに触れた。
____もう一度。
この人を、信じてみたい。
今の私を、信じてみたい。
透き通るブラウンの瞳が、私を射抜いていた。