空気が震えていた。

そしてその振動はそのまま、彼の鼓動のようだった。

途中で何度も口をつぐんでしまったり、話はたどたどしくて、
けれどその懸命さが私の中に直接響いてきて嬉しかった。


小田桐君は、仁科琳を大好きで。
兄のように慕う叔父さんのことも大好きで。
彼の仕事でもあるデザインがすごく好きで。

『大好き』をぜんぶ詰めこんで、『最高の一着』をその手で創りたい、完成させたいって……。


そういうことでしょ?

「うまく言えない」って言ってたけど、本当、うまく言えてない!

私の中で勝手にまとめちゃったけど…

こんなに簡単に要約できるよ。


小田桐君は、自分の想いを伝えることに関しては不器用なの?


他のことは、そつなくやってのけちゃうのに。

何だか意外な一面を覗けた気がして、
ちょっと可愛いな、なんて思ったりして。


もう考えることなんて忘れて、
気づいたらうなずいて笑っていた。