そんなわけで大人しく従った。
なのに、当の本人がいないってどうよ。
「そうか。なら中で待ってるといい」
目の前の人物に言われて、「失礼します」と中に入って引き戸を閉めた。
その人は、ん、とだけ言うとまた背を向けて作業に戻った。
居心地が悪い。
というか落ち着かなくて、とりあえず傍らの椅子に腰掛けようとして、
「かわいい……!」
目を奪われた。
「2年の姫野の作品だ」
「え、手作りなんですか」
「……そのはずだ?」
聞かれても知らない。
装飾に目を凝らすと、かなり細かいデザインが施されている。
材質は木だけど、これを1人で削って作ったのだろうか。
すごい。
興味津々で見ていると、バタバタと足音が聞こえ、背中の引き戸が大きな音を立てて開いた。
「失礼します!と、琳ちゃん!!」
突然の登場に目を丸くする私に、小田桐君は何かを押し付ける。
「んー。これだ、間違いない」
見れば、小田桐君が抱えているのは大きな布。
手芸店にある、カット前の巻物状のやつだ。
そして私の腕には淡いブルーの洋服。
「部長、頼まれてた生地届きましたよ」
「んー、ありがとな」
さっきまで会話していた人は部長だったらしい。
「で、琳ちゃん、ごめんね遅くなってー」
小田桐君は部屋の奥に歩いていき、一角のカーテンを引いた。
中は個室になっていて、姿見まで付いており、フィッティングルームのようになっている。
「ソレ、着て」
この人は、なんでこう強引なの。



