「…初めまして、慧の父親です」
あたしに視線を移し、ニコリともしないまま自己紹介をする新藤慧のお父さん。
たったこれだけなのに…何だかあたしは足が竦む思いがした。
「おっ岡綾世です」
「岡さん…」
そして何かを考えるように一瞬言葉を切る。
「聞いたことのない名前だな。失礼ながら親御さんは何を?」
「えっ親…ですか?」
バリバリ普通のサラリーマンとスーパーのパートなんですけど…
「彼女の家庭はごくごく普通の一般家庭です」
すると新藤慧が助け舟を出すようにそう言った。
「一般家庭…。
私はふさわしい相手を連れてこいと言った筈だが…お前はそう思ったんだな?」
新藤慧のお父さんの声。
なんだかとても冷たく感じる…。
嫌でも分かる。
新藤慧のお父さんはあたしがココにいることを、快く思ってない。
萎縮するあたしの横で、新藤慧はフッと微かに笑うと
「ふさわしいかは分かりませんが、なかなかいない…珍しい女です」
おい、あたしは珍種か?
「あなた、そろそろ時間よ」
「おう、そうだな…」
新藤慧の答えにお父さんが何か言いたげに眉をしかめた時、隣の女の人―――新藤慧のお母さんがお父さんにそう言った。
「…じゃぁ岡さん、ごゆっくり」
…き
緊張したー…



