―――30分後。
「…帰っていいですか?」
「ダメです」
大きな鏡の前で、あたしは絶句していた。
女の人たちが着せてくれたのは、真っ赤なドレス。胸元に施されているバラのデザインがなんともオシャレで、あたしも思わずうっとりしてしまうほど。
だがしかし。
この、超庶民ユ〇クロ大好きのあたし。
恐ろしいほどドレスが似合わないんですけどっ!!!
「なんといわれても帰りますっ!!」
そう言って女の人たちの制止も振り切り、無理矢理ドレスを脱ごうとした時。
「おっせーぞ奴隷!」
バンッと勢いよくドアが開いて、イライラMAXの新藤慧が顔を出した。
そしてそのまま数秒静止した後。
「…ブッ…!!!」
爆笑。
ちょっと。こんなに笑ってる新藤慧見たのはじめてなんですけど!
いつも仏頂面のクセに!!!
「そっそんなに笑わなくてもいいじゃん!」
「だっ…お前ドレス似合わねー!!!」
一頻り笑った後、笑い過ぎてでてきた涙を拭いながら
「まーさっきよりはマシなんじゃね?
イモがジャガイモくらいにはなったな」
嬉しくねーわ。
「よしっじゃ行くぞ!」
なぜかご機嫌の新藤慧が、ガシッとあたしの腕をつかむ。
えぇっマジで行くの!?



