そのまま悠里は帰ってこなかった。
また体育館にいると思って俺は向かった。

体育館の中ではやっぱり悠里が一人でシュート練習をしていた。


「お前…授業サボって何してんだよ?」


俺がそう話しかけると悠里は満面の笑みだった。


「来てくれると思ってた。待ってたんだよ?」


下から覗き込むような形で悠里は俺を見ていた。
悠里の些細な行動で俺はドキドキした。

笑顔を見るたびに安心する。


って違う、違う!
ただ迎えに来ただけだ。


「早く教室戻るぞ。」


俺は足早と体育館を出ようとした。


「なんで?うちはまーくんと一緒にいたいだけなのに…。」


そう言うと悠里は俺の手とった。
悠里は下を向いていていたが耳まで真っ赤なのが見て取れた。

俺はいつも以上にドキドキして、繋がれた手から緊張されていることを悟られないようにするので精一杯だった。


「まーくんは…うちの事嫌い?」


「いや!そんなことは…」


そう俺が言い終わるより早く悠里は目を輝かせた。


「なら、一回でいいから勝負しようよ!」


俺は心のなかでドキドキしたことを後悔した。


「なんでそうなるんだよ!?」


「いいから!いいから!授業が終わるまでには戻るから!」


「嫌だぁ!帰りてぇ!」


そのまま悠里と授業を潰してバスケをした。


いつの間にか放課後になっていた。

俺は机の上で財布をあけた。
今日は悠里にクレープをおごった、って言うかおごらされたのだ。


「はぁ…。」


金欠の俺には大ダメージなうえプライドさえなくなっていた。

くそっ!絶対強くなって見返してやる!
そう心の中で誓った時誰かが教室に入って来た。


「遅くなってごめんね…。少し話してもいいかな?」


そう話しかけてきたのは菜槻だった。