「俺ってやっぱりバスケに向いてねぇのかも…な。」


そんな事を呟いていた。
もう男としてのプライドが女によって粉々に壊されてしまったのだから。


「…泣きたい。」


「じゃあ泣けば?すっきりするかもよ?」


俺のプライドを粉々に砕いておいてまだズバズバ言うのか…コイツは。

神山とバスケで真剣勝負をしてあっさりと負けてしまったのだ。

今なら何を言われても耐えられる自信はある。
そんなことを考えながら神山に笑顔だけ見せた。


「なんでそんなに弱いの?やっぱ男子ってバスケ強くなくちゃ。」


今の言葉は心臓を刃物で貫かれたような感覚に襲われた。


「俺だってうまくなりたいけど…うまくなれねぇんだよ…。なんでお前はそんなにうまいんだよ…。」


「私は…昔っからバスケしてたから。バスケ部のエースもしていたんだよ?凄いでしょ。」


神山の才能が羨ましすぎるぜ。そんな才能が欲しいわ…。

俺がそう思いながら前を見ると神山はうつ向いて泣いていた。

俺は訳が分からずあたふたしていた。女の子が泣いている時にしてあげると良い本とか読んだことがないからだ。

俺は一応神山を抱き寄せた。


「何があったのかは知らねーけど、泣きたいならなけば?すっきりするかもよ?」


さっきコイツが言っていたことを真似して言ってみた。
神山はそのまましばらく泣いていた。


コイツと一緒にいると心臓が何個あっても足りないような気がする。


色んな意味でだけど…コイツが泣いていると心臓が締め付けられるほど苦しくなる。


どうにか守ってやりたいと思った。