「空くーん!」

後ろから呼ばれる声がした。
早野だった。

「私も行くよ。喉かわいちゃった。」

完全に想定外。
気をきかせたつもりだったが、流の気持ちを知らない早野だ。仕方ない。

「流は?」

オレが聞く。

4限の化学の課題やってないって。ノート貸してあげたからやってるみたい。

早野のノートを写しているんだ。流の課題は完璧な出来になるな。逆に完璧すぎて怪しまれないか心配だ。

「まあいこっか。」

オレが歩みを促す。

自販機の前で早野がうなっている。あれもいーなこれもいーなと独り言をいっている。

「意外と優柔不断なんだな。」
オレが早野に言った。

「こーいうの決めるの苦手なんだあ。全部よく見えちゃう。」

照れたような笑いを見せながら早野はそう言った。

その仕草を見て早野が男に人気がある理由が少しわかった。

いっこうに決まらない早野を見かねてオレが自販機に小銭を入れて、ボタンを押す。
取り出し早野に渡す。

「これオレのオススメ。オレが飲んでるのと一緒。」

先に買って飲んでいたパックを見せる。

「んぇ?くれるの?」

早野は少し驚いた様子だった。

「うちのふがいない友の課題を助けてくれたお礼に。」