世界史の授業中に流がこう言った。

「バラ戦争ってかっこよくね?ゲームにでてきそうだよな!」

くだらないとオレが返すと流は心底不満そうな顔をした。

流は頭がよくない。
悪いわけじゃないがよくはない。
定期考査前は決まってオレにすがってくる。

オレは勉強はそこそこにできる。
出来すぎないように、悪すぎないように、目立たないように。
出来すぎていろんな人に教えを求められるのはのぞましくない。
だから適度に勉強する。
流にだけ教える分には問題ない。

「なーバラ戦争ってバラが戦争すんの?」

流はまだバラ戦争にこだわっていた。

「んーそうじゃねー?」

オレは空返事をした。
話に乗っかってもめんどくさい。

そこで気付いた。
オレに向けられる視線に。
あれはたしか早野希沙

学年でも可愛いと噂の女だ。容姿端麗、文武両道という言葉ががよくにあう。

そして流の想い人。

流も女の中では人気がある。面白く顔もいい、人望もある。決して不思議な事じゃない。
二人は世間でいうお似合いなカップルになると思う。
正直オレはどうでもいい。高校生における恋愛なんてたかがしれてる。
そんな事で一喜一憂などしたくない。