「今日も雨…か」
  この頃ずっと雨続きだ。
  こういう日が続くと嫌な事が起こる前兆である。
 「雨!また雨だよぉ!」
  こくりと私は頷く。
  私は冷川 緑、普通の高校一年生。
  入学してから三ヶ月経った。
 「いつまで続くのかなぁ?」
  トナリで話してるのが双子の姉、冷川 きい。
 「なんだか嫌な予感がする」
 「ええっ?が…がんばって!」
  できればこのままずっと雨でいてほしい。
 「晴れちゃったよ!緑ちゃん!」
  うぉぉぉ!晴れてしまった…!
  なんでこんなにあせっているかというと、晴れると始まってしまうからだ。
  いやだいやだいやだいやだいやだ!!
 「すみません、生徒会です」
  きっちりあいさつをしながら一人の男子生徒が入ってきた。
  なぜか女子がざわつく。
 「きゃっ!会長だよ!緑ちゃん」
  会長?
 「誰?」
  そう言うとびっくりした顔をしてこっちに寄ってきた。
 「誰って…イケメン生徒会長だよ!町田 かぐら先輩だよ!」
  ああ、そういえば完璧生徒会長って有名だっけ。
 「生徒会からの連絡です。今年から図書室が使用できることになりました
  それで、誰か図書委員になってくれる方はいませんか?」
  図書委員? めんどくさ…
  いくらなんでも入る人なんて…
 「はいっ!あ、えっと…私達はいります!」
  姉さん!? っていうか私も?
  姉さんが私の手を掴んで挙げている。
 「ありがとうございます」
  きゃーっと声が上がった。
  『私も入ればよかった』とか『いいなー』とか。
  なら誰か私と変わってくれーー!
 「姉ーさーん?」
 「ごっ…ごめんなさぁいっ!だってだってぇ、いいとこ見せたかったんだもん!」
  そんなことを言いながらも、ちょっと笑っている。
 「図書委員…集まってだって。いこ?」
  どれだけ姉さんがにこやかでも私はムリだ。
 「失礼しまーす」
  図書室に入ると、図書委員だと思われる男子生徒が二人いた。
 「君達もしかして委員?」
 「はいっ!私は冷川 きいです。こっちは双子の妹の緑」
 「ぼくは澤宮 優!一年、よろしく」
  にっこり一人があいさつしてくれた。
  姉さんがもう一人にあいさつに行ったんだけど、ムシされたみたいで泣いて帰ってき  た。
 「あいさつぐらいしなよ」
  そう言うと急に立って私のネクタイをグイッと引っ張った。
 「オレは日橋 星哉。…ど?これで満足?」
  満足って…!
 「なんで私がおまえに満足しないといけないんだ?」
 「馬鹿には分からないだろうけど」
 「言っておくが、私はお前よりは馬鹿じゃない」
 「はぁ?」
  っと、このままだとめんどくさいな。
 「失礼します」
  そう言って、会長が入ってきた。
 「会長!どうしてここに…!」
 「ぼくも入ることになったんだ。よろしく」
  マジか…!
 「会長~~!」
  ヤバい!姉さんがときめいてる!
 「よろしく。緑さん」
  うっ…!やばい…きもち…わる…
  倒れそうな所を日橋がキャッチしてくれた。
 「あ…ありが…」
 「おまえ、こんなんでギブアップしてたら本性知ったらやばいぞ」
  本性…?
 「本性なんて人聞きが悪いなぁ…本性じゃなくて、それはぼくの み・りょ・く★」
  うううううっ!! 何!?なんなのこの人?
 「おい、大丈夫か」
  ムリムリムリムリ!!! なんか会長がキャラ変ってるきが…!
 「まさかこれが本性?」
  姉さんが聞く。
 「そだよ、ぼくたち長い付き合いだしね~」
  澤宮がニコニコしながら言ってる。
 「会長…」
 「…おい、あいつガッカリしてんじゃねえのか?」
  ガッカリ…そうだよな、憧れだったしな。さすがに姉さんでも…
 「…ガッカリするかな?」
 「ステキですっ!」
  やっぱりーー!
  姉さんはもともと変だったからな。
 「意味分かんない女だな」
  ムッ…なんかさっきからコイツむかつくんだよな…!!
 「緑さん!すいません…大丈夫ですか?」
  しょんぼりした顔で遠くから見ている。
  もしかして私に気を使ってくれてる…?
 「あーはい。ちょっと近ずいて来てくれません?」
  少しずつ近ずいて来る。
  うん、大丈夫。いける
 「…へぇ」
 「大丈夫になりました」
  そう言うと急に元気になった。
 「会長」
 「なんですか?」
 「私のためにありがとうございました。いちおう言っておきます」
  そういういと顔を真っ赤にしてあっちに行ってしまった。
  なんなんだ?
  その時私は知らなかった。この図書委員になった時から始まっていることを。