大きな手にはかなり小さく見えるそれを、柄の部分ではなく輪っかの部分を人差し指と親指で持ち、



「いいか、まずどの金魚をすくうか狙いを定めるんだ。大きいものはそれだけ重いからな、まずは小さいものを狙え」



そう言っておっちゃんの視線は金魚の水槽の中を右へ左へ揺らぐ。


水槽の中には無数の赤い小金、少しだけ大きめの小金、目が飛び出している黒い出目金。


そんな金魚達が忙しなく泳いでる中、視線は止まった。



「小さな金魚の中でも活発に動くヤツより、止まってるヤツの方がすくいやすいからな」



きっとアレだ。


おっちゃんが狙っているのは、すぐ近くにいるあの金魚だ。



「いいか、網を水に浸ける時は、斜めに水を切る様にするんだぞ。

そうすると水の抵抗が少なくてすむからな。水から出すときも同じだぞ」