待ち合わせの時間を10分過ぎたというのに、待ち合わせ場所には僕だけが立っていた。

もっとも、今日は涼子との約束ではなく、この人物にとってはこれが日常茶飯事なのだが。


「悪い、待たせたよな」


その言葉とは裏腹に、屈託のない笑顔でこちらに向かってきた。

高校時代からの親友でいいやつなのだが、時間にだけはいつもルーズなのだ。


「別にお前にとってはいつも通りだからいいよ」


僕がわざとらしく不機嫌な顔をしても、何一つ申し訳ない顔をせずにそのまま歩きだした。

大学に入っても何も変わらない親友の姿は、今の僕の心をどこか落ち着かせてくれた。