先天性マイノリティ




弱った脳内は必死に産声をあげ、こちらこそが本物だと夢見がちに錯覚する。

…どうしたのだろう、嬉しくて、笑いが止まらない。


潮が満ちるように純粋な気持ちが競り上がり、高揚する。

空でも飛べそうな気さえして、弱気な俺が消えてしまったように開放的。

でもその期間が終わると、一日のうちに五分五分の割合で躁と鬱が入れ替わる情緒不安定状態になった。





メイと思い出を呑み交わした日から三週間。

バイトに四、五日出た後、急に働くのが面倒になり行くのをやめた。

近頃は何処にも外出をしていない。

…"目の前にいる"コウが部屋から出るなと駄々を捏ねるから、余計に、だ。


コウと話すのが酷く久しぶりに思える気がしたけれど、そんなはずはないと思考を糺す。


なんだか最近の俺はコウの傍を離れたくない衝動が大きい。

男のくせに気色が悪いと自分でもわかっているけれど、一舜でも目を離したらコウがいなくなってしまいそうな気がして、瞬きをすることすら惜しい。

…気づけばもう三日以上寝ていない。

コウと話をするのが楽しいからだ。

時間なんて大層ちっぽけな呪縛なのだと、生まれてはじめて感じている。



「やっほーゼロジ、遊びに来たよ」



時折メイも遊びに来る。


玄関の鍵が閉まっているのにどうして入って来れるのか不思議だが、そんなことは一々気にしなくても良いらしい。


…あ、こいつらに合鍵を渡したのかもしれない、と軽く考える。



だらだらと「三人で」話をしていると、玄関の扉を乱暴に叩く音がした。誰かの叫ぶ声がする。