先天性マイノリティ




静まり返った部屋。

つけていい?と、メイがデッキの電源を点ける。

流れ出した重低音。

入れたままだったCD。

いつの間にか俺の家のラックはコウが愛した曲たちで埋め尽くされている。

暫し時間に身を委せ、無になる。

空になったメイが、空になった俺へ紡いだ言葉。




「私、本当は弱いし、ゼロジ以上に自分に自信がないんだよ。コウも、そうだったと思う」



眼を細めて言う彼女の表情はとても綺麗だった。


ふいに涙が零れそうになって、誤魔化すために下を向く。

瞼の裏が熱い。



「この曲、コウが好きだったやつだよね?まったくあいつ、過激なんだから」



CDの歌詞カードを手にしたメイが呟く。


コウが最も好きだった「Re:tire」というバンドは恋愛を諷刺する曲しか書かないという一風変わったグループだった。

ボーカルの自殺によって活動休止となったのだが、そのボーカルも死の直前に同性愛者であることをカミングアウトしている。

だからという訳ではないだろうけれど、コウはこのバンドの世界観をとても愛していた。



「いくら好きだからって自殺まで真似しなくたっていいのにね」


「…本当にな」



顔を見合わせて苦笑する。


流れる音楽に耳を預けながら再度の沈黙。


この前まではここにコウがいて、一緒に曲を聴いていたのに。