先天性マイノリティ





──恋と愛の違いは?


恋愛感情と友情の違いは?


無償と駆け引きの違いは?


憧れと憎しみの違いは?


哀しみと恨みの違いは?


永遠と一瞬の違いは?


幸せと喜びの違いは?


傲慢と同情の違いは?


純粋と狡猾の違いは?


自己満足と自己犠牲の違いは?


真実と嘘の違いは?


誕生と終焉の違いは?


生と死の違いは?



…コウとメイの真意は?



俺の、真意は?





すべてがわからなくなってしまった。










「一応男なんだから、一発ぐらい殴り返しなよ。…まあ、あんたの性格じゃ無理か」


タクシーを拾って帰宅した俺のアパートで、強制的に治療を受けている。

埃を被った救急箱を開けたのも久々だけれど、メイがこの部屋に来るのも数年ぶりだ。

いつも三人で落ち合うときは、大抵外かコウの家だったから。



「…ごめん」


「今度謝ったら罰金」



念入りに顔中に貼られた絆創膏。

明日、このままバイトに行ったら散々尋問されるだろうと苦笑しながら俯く。

情けないことにナツメから言われた台詞が頭の中を迂回している。

速くなったり遅くなったり、消えそうになってはまたはっきりと現れて何度も何度も周回する。

言葉というものは酷く厄介だ。

形がないくせに深い爪痕を遺す。

脳内の映像フィルムに焼かれた情景と共に幾度となく再生されて、消えて。

VHSのように再度巻き戻して。

早送りして、一時停止。


…きりがない。




──『俺はお前らを許さない』



本気の眼だった。

受けた傷を見ても彼は真剣だ。

俺とメイのせいでコウが死んだと、そう思っているのだろう。

コウがどんな気持ちで死を選んだのかわからない以上、否定は出来ないしするつもりもない。


…ナツメの言っていた通り、やっぱりコウは俺のせいで死んだのか。



俺が、精神的に負担をかけたから。