先天性マイノリティ




(コウが大切だ。メイが大切だ。俺は二人を裏切りたくない。それなのに、俺は)



掻き毟りたくなるような疑念が次々と、心臓の奥から競り上がって来る。



(…コウが愛していたのは俺じゃなくて、メイ)


(いや、ナツメだったのかもしれない)


(メイだってコウが好きだったのかもしれない)



留まることを知らないネガティブな第二の俺は疑心暗鬼のトラップに足を捕られる。

手を差し延べることもせず、膝を抱えながら呟く第三の俺。



『お前、さっきナツメに言ってたよな?"コウが誰を好きだったとしてもいい"、"俺はコウと同じくらいメイも大切なんです"って。本心は悔しくて哀しくて堪らないくせに、とんだ偽善者だな』


『そうだよ、俺は弱くてどうしようもない人間だ』



俺自身の声が混じり合い、服役中の罪人のような気持ちになる。

…昔から俺は自分が嫌いだ。

今日、更に大嫌いになった。


コウとメイを疑った時点で罪は成立し、卑屈になった思考は悪意しか産み出さない。