先天性マイノリティ




「イラスト、今もまだ描いてる?」


「うん。恥ずかしいけどね、こんな外見になってもオタクなんだよ、俺。最近は漫画家になりたくて、必死で描いたりしてさ。相変わらず馬鹿みたいな人生送ってるよ」


「うわ、職場の女の子たちが聴いたら卒倒しちゃうね。それなりにモテるでしょう?」


「会社ではチャラ男のふりしてるから。おかしいよね、内面はちっとも高校の頃と変わってないのに、コンタクトにして、髪染めて…ちょっと見た目が変わっただけで女の子が近寄って来る。ニセモノの俺は大人気だよ」



苦笑をしながら言う彼は昔と少しも変わっていなくて、なんだかとても安心した。

こうして話をしていると、高校時代に戻ったような気がする。


…コウが生きていたらいいのに。


今あの頃に戻れたなら、てめえ自殺なんかしやがって、と殴ってやるのに。




「コウのこと、どうして知ってたの?」


「従兄弟から聴いた。ウエダさんと同じクラスだった派手なやつ覚えてない?ナツメユウタ。結構仲良かったみたいで」


「あ、知ってる、ナツメ先輩。人気あったよね」


「うん、最近もウエダさんの家に遊びに行ってたみたい。ショックだってメールが来たよ」


「ふうん。そうだったんだ」



私は少ししか話したことがないけれど、イマムラくんの従兄弟だということは記憶にあった。

卒業してからもコウと親交があるとは知らなかったけど…確か、葬儀でも姿は見なかった。


考えてみると、コウの友人関係を私はあまり知らない。


ゼロジと私はそれなりの人付き合いしかしないタイプだけれど、コウは昔から結構知人が多かった気がする。

男女問わず好かれる人柄と、一見の親しみ易さ。


…深く知ると、とんでもなく変人で手に負えない唯我独尊男なのだけれど。