先天性マイノリティ




「覚えてなくて当然だよ。俺すげー地味だったし、親の離婚で名字も変わったから。ちなみに高校時代の名前は、イマムラシュウヤ」


「イマムラくん!?」



クローズアップされた記憶の中の彼は目の前の男の容姿とは似ても似つかない。

坊主頭で眼鏡をかけ、気弱そうで、いつも力の強い男子たちから虐められてよく泣いていた。



「思い出してくれた?そうだよ、ワカギたちから散々虐められてた丸坊主の。俺、激変したでしょう」



衝撃に頷くことしか出来ない。

…大人しい彼が、ブランドものの接客業。


イメージが結びつかない。


あまりに変わって、垢抜けた。


…でもよく見ると確かに、内気そうな優しい瞳の奥の色はあの頃のままだ。



「本当にイマムラくん?信じられない。変わりすぎだよ!元気だった?」


「キサラギさんが俺のこと覚えててくれるなんて思わなかった。嬉しい」


「覚えてるに決まってるよ!よく話したじゃん」



イマムラくんは、遠慮がちで目立たない男の子だった。

優しくて強く言えない性格が災いして学年のボス的存在の集団から虐めの標的となっていた。

周りの女子は完全に彼を馬鹿にしていたけれど、私は彼の穏やかな気性がとても好きだった。

絵が巧くて、休み時間に少年漫画のキャラクターを黙々と描いていた様子が思い出される。

私もゼロジやコウと出逢うまでは完全に一匹狼で、どのグループにも属さなかった。

三年になって別のクラスになってからも時折話をしていた気がする。


──話していてほっと出来るのはきっと、彼も「なんとなく」の感性を持っている人だから。