先天性マイノリティ




「ありがとね、キサラギさん」


「私なんかと話しても、いいことひとつもないですよ」



目の前の男は私の毒舌にもめげず、人懐こい笑顔を向けて来る。

フロアにいるたくさんの女の子たちの中から私を選ぶなんて本当にもの好きだ。

煙草に火を点けながら思う。

最近ではコウの吸っていた銘柄が手放せなくなってしまった。

これも一種の依存だろうか。



「えーと、まず、俺の名前知ってるかな?」


「ホシノさんが騒いでるから知ってます。シュウヤさんでしょう」


「そうそう、俺、カガタニシュウヤっていうの。宜しくね」


「私の名前は…」


「キサラギメイちゃん。よく知ってるから、自己紹介は不要」


「はあ…そうですか」



軽い調子から、ナンパ以外のナニモノでもないと判断をする。

ついて来るんじゃなかった、と後悔をしはじめた次の瞬間、私は思わず固まった。





「…ウエダさん亡くなったんだって?びっくりしたよ」




驚いたのはこっちだ。

理解をするまでに少し時間がかかった。

…何故、コウを知っている?



「やっぱり覚えてないよね、俺のこと。高二の時、君と同じクラスだったんだけど」


「…同じクラス?」



ろくに目を通した覚えのない卒業アルバムを脳内で探ってみるが、該当する人物は見当たらなかった。