閉じそうになる脚を強引に開かせて、両膝の間に顔を埋める。
傷口に軽く歯を立てる。
息を呑むような、高い鼻声。
血の固まりかけていた傷口からは、再び血が滲み出していた。
鉄の匂い。
サエキの体の震えが、皮膚の剥がれた敏感な部分を、カナタの舌に押し付けた。
「ひあ、う」
濡れた舌で、新たに溢れ出した血を舐めとる。
ざらざらとした舌触りが痛々しい。
ちらりとサエキの顔を見上げると、怯えて痛みに表情を歪めながらも、その視線は、生々しく痛めつけられる自身の傷口に、一心に注がれていた。
カナタが見ていることに気づくと、狼狽えたようにぎゅっと目を閉じる。
睫毛の先が光を反射した。
真っ赤な頬に、いつのまにか涙の痕がついていた。
(あ、泣いた)
見てみたいと思っていたサエキの泣き顔は、思っていたよりずっと弱々しくて、可哀想なくらいいっぱいいっぱいだった。
眉根がぐっと寄せられたままなのが、官能を煽る。
その目をなんとか開けさせようか、それとももっと嫌がって痛がって苦しむ姿がいいか、気持ちが揺れた。
ぬめった舌で擦り傷を穿って、吸い付く。
ほんのり赤らんだ太ももが震える。
上がる声を抑えようと、全身がひくりと強張ったのを見て、気が変わった。
その、必死で押し殺そうとしている、喘ぐような呼吸がいい。
口を覆っている手を取って剥がすと、サエキは濡れた睫毛を上げた。
熱っぽい目尻に指を沿わす。
サエキが口を開いて、なにか言いかける。
その時だった。


