人生の楽しい終わらせ方


え、という音が口から出て、それきり言葉を失う。

パーカーの袖の下には、確かにガーゼを当てて包帯を巻いた、切り傷があった。
だが、それを彼女に明かしたことはない。
どちらかといえば隠そうとしていたし、隠せていると思っていた。
五日前に切ってからなかなか塞がりきらないのが気になってはいたが、痛みはそれほど酷くなかったので、左腕を庇うような仕草も一切していないはずだ。

驚きがなによりまず先に来て、否定することも忘れていた。
パーカーの袖がサエキの指でゆっくりと捲られて、一度も晒したことのなかった腕が、あらわにされる。
骨と皮しかないような腕には、真っ白な包帯が、数周巻かれていた。


「なんで……知ってんの」
「なんとなく」


サエキが包帯の端に指を引っ掛けて、ちらりとカナタを見る。
外してもいいか、ということだと思って、カナタは目で小さく頷いた。

サエキはその指を、包帯の下に潜り込ませる。
適当に挟み込んであった端が、するりとほどけた。
片手で支えたカナタの手首から、もう片方の手で包帯を剥ぎ取りながら、サエキは口を開いた。