サエキの首は、両手を回せば指先がゆうに重なってしまうほど細かった。
首の裏に、軽く爪を立てる。
サエキは抵抗もせず、ただカナタを見つめていた。
見つめ返して、「ねぇ、」と囁く。
「痛いの、好きなの」
「……そんなこと」
「好きでしょ」
「ちが、」
「違わないじゃん」
ちら、と目を伏せて、サエキは眉を寄せた。
眉尻が下がっているが、困っているわけではない、と感じる。
「実感がほしいの」
「実感?」
首にかかったカナタの手を、サエキは掴んだ。
指先が、きゅっと手首を握る。
「痛いと、生きてるって気がするじゃん」
「生きてるって、実感、したいの?」
「カナタもそうじゃないの?」
「俺……?」
そう聞かれて、思わず馬鹿正直に考えてしまったのが、迂闊だった。
サエキの両手が、カナタの左手首に添えられる。
包むように握られて、サエキの顔を見た。
「じゃなきゃ、こんなふうに腕切ったり、しないよね?」


