人生の楽しい終わらせ方


中身が半分ほどになったペットボトルのキャップを閉めると、カナタは顔を上げて、サエキを見た。
そして、同時に、動きを止めた。


頬が赤いのは寒いせいだと、思っていた。
だが、俯いたサエキは、耳や目元まで赤くして、カナタを窺い見ていた。

熱を持って潤んだ目尻が、大人びたアイメイクとギャップがあって、やたらと蠱惑的だ。
手は行き場なさげに口許や首許をうろうろしている。
カナタがなにか動くたびに、いちいち喉が引きつれたように息を飲んでいた。
ずっと薄く開いたままの唇の間から、浅い呼吸音が聞こえる。

サエキは、カナタと目が合うと、ふいと逸らした。
だがまたすぐに、横目の視線を送る。


「……カナタ、」
「……うん?」
「いたい、よ」
「うん……」


目が合ったまま、カナタは左手を持ち上げた。
サエキの、怪我をした膝の上に、手を乗せる。
やはり、びくりと体が跳ねた。
ひんやりと冷やされた肌には、手のひらは温かくて、必要以上に刺激的だろう。

脛の上を滑らせて、手はふくらはぎの内側へと移動した。
新たな血の滴りを、指で拭い上げる。

サエキは頬を真っ赤に染めて、目を伏せた。