あんな表情をされたら、引き留めることなんてできなかった。
メールの返事がなかった理由も、電話に出てくれなかった理由も、はっきりとわかってしまったのだ。
薄々そうではないかと思っていて、でもきっと違うと思いたかっただけに、少し堪える。
がさがさと音を立てるビニール袋を眺めながら足を投げ出していると、視線を落とした先の地面に、スニーカーの爪先が見えた。
視線を上げる。
ジーンズの足に、同じコンビニのビニール袋、柄物のパーカー。
ポケットに突っ込まれていた腕が抜かれて、上がる。
それを目で追って行くと、視線が交わった。
ぱち、と瞬きをする。
相手は、す、と視線を逸らして、首の後ろを撫でた手を下げた。
「……おつかれ」
少しむっとしているような、いつもの無表情。
気だるげな立ち姿。
向かい合っていても、あまり合わない視線。
サエキが聞きたくて堪らなかった抑揚のない声で、会いたくて堪らなかった人は、ぼそりと言った。


