「クリオネ、意外と凶暴だよ」
「知ってる」
「見た目かわいいけど、肉食だし、食事シーングロいし」
「知ってるよ」
「……俺のことそんなふうに思ってんの?」


今はクリオネ、ではなく、自分の話をしていたのだと、思い出す。
カナタがサエキのことをあまりしらないのと同じように、サエキもまた、カナタのことをほとんど知らないはずだ。
それなのに似ている、なんて言えるサエキを、不思議に思った。

サエキはまた、首を傾げて唸った。


「クリオネの、赤いところあるじゃん」
「うん」
「昔ね、あれが心臓なんだって、本気で信じてた」
「あぁ、俺もそう思ってたかも……」
「生きてるのがさ、外から見えるなんて、羨ましいよね」
「そーゆうとこ、俺は似てないでしょ」
「うん……そーかも。カナタ、生きてても死んでてもおんなじ顔してそう」
「なにそれ」


生きてるような顔で死んでそう、という意味か、死んでるような顔で生きてる、という意味か。
瞼を伏せて視線を泳がせると、サエキがちらりと視線を寄越した。


「その顔。クリオネみたい」
「え?」
「冷たくてなに考えてるかわかんなくて、綺麗で」


反応に困ったカナタは、サエキを横目で見た。
さっき掠めてきた視線はもう外されていて、また海に奪われている。