三日前まで埃を被ったままサエキの踏み台になったりしていたテーブルは、今は綺麗に拭いてきちんとソファーの前に置いてある。
座るとごつごつと痛くて、錆びたスプリングが嫌な音を立てるソファーには、古いクッションが敷かれていた。
一応座っても平気なようにはしてあるが、座り心地は最悪なので、たぶん使われることはないだろう。

テーブルの上にカナタから受け取った袋の中身を出して、レジャー用のライトを点けた。
真っ白い灯りが眩しいので、できるだけ窓から離れた部屋の隅に置いてある。

菓子パンの袋を破って、一口かじってから、サエキは言った。


「カナタって名前も、私しか知らない?」
「うん、たぶん」
「なら、扉の前に来たら、ノックして名前呼んで。それでいいことにしよう」


カナタは唐揚げを頬張りながら、頷く。
まだほんのりと温かかった。

部屋の中は、空気の動きがなくて、湿気っている。
外はもうすぐ冷え込んでくる頃だろう。
気温が下がって風が強くなると、隣の部屋の割れた窓から吹き込んできて、決まって変な音を立てていた。
最初にその音を聞いた時に、サエキがやけに不安そうな表情をしたのが、印象的で。